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【私の初めてのひとり旅】町田忍さん オランダ、イギリスほかヨーロッパ巡り(2)

場所
> アムステルダム、ロンドン、ローマ、インターラーケン、ザルツブルグ、ミュンヘン、パリ
【私の初めてのひとり旅】町田忍さん オランダ、イギリスほかヨーロッパ巡り(2)

フィレンツェのベッキオ橋上。小さなカメオや土産品を扱う店が並んでいた

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まちだ・しのぶ[庶民文化研究家]
1950 年、東京生まれ。大学卒業後、警視庁警察官を経て、「庶民文化研究所」を設立。銭湯や手描き看板、食品など100以上の研究テーマを持つ。昭和レトロ全般に詳しく、著書に『納豆大全』(小学館)、『昭和レトロ博物館』(角川学芸出版)など。映画やドラマの時代考証や監修も手がけ、テレビ・ラジオ番組出演も多数。(一社)日本銭湯文化協会理事。

イギリス入国時にアクシデント、あわや強制送還の危機も……

【私の初めてのひとり旅】町田忍さん オランダ、イギリスほかヨーロッパ巡り(2)から続く

アムステルダムを出発し、ロンドンに向かうべくフランスを経由してフェリーでイギリスへ渡ったのだが、ここでとんでもないことが起きた。私が渡欧した2か月前の72年5月に、イスラエルのテルアビブ郊外の空港で日本人による乱射事件があった。そのため、リュックを背負った長髪の日本人ということで私は別室に連れて行かれたのだ。荷物の中身を全部出して身体検査を受け、帰りのチケットはあるのか、お金はいくら持っているのか、旅の目的や行く先なども細かく聞かれた。日本へ強制送還されるのではないかという不安が頭をよぎった。

しかし私には、この旅の目的の一つとして、ロンドンで開催されるボーイスカウトの指導者研修に参加する予定があった。その許可証を持っていたのが効いて、事なきを得た。1週間の研修後はケンジントンにある元兵舎の安い宿泊施設に1週間ほど泊まることができた。

その後は、イタリアのローマ、フィレンツェ、スイスのインターラーケン、ベルン、オーストリアのザルツブルク、ウィーン、ドイツのミュンヘン、フランスのパリを回った。ユーレイルパスを使って鉄道で移動し、宿泊は夜行列車のほか、ユースホステル、ペンションなどを利用。野宿したこともあった。

4.トレビの泉.jpg
ローマのトレビの泉。大雨が降っていたのでビニールの雨具を着用

ひとり旅といっても、現地で出会った外国人や行きの飛行機で一緒だった日本人とも顔を合わせていたので、情報交換には苦労しなかった。国際学生証でパリのモンマルトルのミュージカルを割引で見られたのもうれしかった。

印象的だったのは、羽田空港に帰ってきた時、日本人の髪の毛がいつもにも増して黒く見えたことだった。きっと外国人の金髪に目が慣れてしまったからだろう。旅を通して、わびさびを重んじる日本の伝統文化を再認識することができた。例えば、庭にしてもヨーロッパでは人工的に手を加えるのに対し、日本では自然と一体化している。木造と石造の建築物や食文化の違いも興味深かった。

ちなみに私がヨーロッパに行った時はまだ固定相場制で、1ドルが308円。当時とは違って、昨今は海外でも国内より安く行ける国もあり、時代の変化をしみじみと感じている。

文・写真/町田 忍


(出典:「旅行読売」2025年9月号)
(Web掲載:2025年9月6日)


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